望まない出会いから生まれる人生
結婚の約束をした男女がいました。
女は喜んで両親に伝えますが、男の実家がやや遠方の他県であることによって猛反対を受けます。
スーツを着込んで男は女の両親の元へ挨拶に行きますが、会うことすら叶いませんでした。
女の両親は、女の幸せを考えていましたが、遠くへやることは自身たちの寂しさからどうしても譲れない想いでした。
特に、優しく体の弱い父親が涙を流して懇願し始めたため、娘は別れざるをえなくなりました。
悲しみに暮れる娘に、困った両親は縁談を持ち掛けました。
もちろん、そんな気になれない娘。
無気力になっていたこともあり、両親の組む縁談話の流れに飲み込まれます。
父親は言いました、彼は自分と同じ干支だからきっと良い人だ。
恋人を失った娘にとって、心のよりどころは父親しかなかったのかもしれません。
きっと良い人だ。
恋人を忘れさせ、県内で結婚させるため、親戚一同必死で説得します。
相手の人は見た目は良くないが優しそうではあります。
一緒になってくれたらそれだけでいい、何もしなくていい、その人は言いました。
娘が自体の進行に気づいた時にはすでに、結婚の話は元に戻せないところまで進んでいました。
結婚した直後、娘は知るのです。
その相手は結婚してはいけない人だったことを。
偏った価値観、偏った亭主関白、家庭内暴力、言論暴力、経済的暴力、被害妄想、
それらを持ち合わせた男であることを。
もはや時間は取り戻せるものではありません。
その結婚をするまで、性的な男というものを知らなかったほど真面目な娘は状況を飲まざるを得なかったのです。
そして長女の、わたしが生まれました。